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東京地方裁判所 昭和56年(ワ)5078号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

「一 請求原因

1 原告らは別紙物件目録記載(一)及び(二)の土地(以下「本件土地」という。)を所有している。

2 被告は昭和五五年六月三日から本件土地上に別紙物件目録(三)記載の建物を所有し、本件土地を占有している。」

【判旨】

一請求原因事実は、すべて当事者間に争いがない。

二それで、本件土地についての被告の占有権原の有無について検討する。

(一) 借地権の相続について

<証拠>によると、次の事実を認めることができる。

1 輝治<編注、被告の父>は、昭和三三年頃シズと知り合つたが、輝治の妻テイは昭和二七、八年頃から寝たきりの状態であつたため、輝治は老後をシズと暮すことを考えていた。

2 一方、原告らの父四郎次は、もと本件建物に居住していたが、昭和三六年頃隣に原告忠太郎が建物を新築したのでそこへ移転し、本件建物を貸家とする予定をたてていたところ、シズ(シズは、原告らの祖父の甥にあたる村上忠男の妻)から、輝治と生活をするのに本件建物を売つて欲しいとの申出を受けた。四郎次は、当初本件建物を売却するつもりはなかつたが、姻戚関係にあるシズのたつての希望であつたので、昭和三六年八月一五日頃本件建物を代金五七三万二、一〇〇円でシズに売却し、その敷地である本件土地をシズに賃貸することにし、翌三七年四月一一日頃シズとの間で正式に本件土地の賃貸借契約(目的・木造普通建物の所有、期間昭和五七年四月一〇日まで、賃料・月額二、一〇〇円、賃料は後日月額四万三、八〇〇円に改訂)を締結した。

3 本件建物の右代金はすべて輝治が支出したものであり、昭和三八年六月頃には二人の生計の資金とするため、輝治が金二四〇万円を出捐して本件建物の二階部分を増築しアパートとしているが、輝治は当時すでに七三歳という高齢であつたため、自分が先立つた時シズの生計を確保するために、本件建物の買入代金、増築資金をシズに贈与することにしたものであり、このことを前提として本件土地の賃貸借は四郎次とシズとの間で締結されており、右賃貸借契約に輝治は関与していない。

4 昭和三六年一二月三一日テイが死亡したため、翌三七年頃輝治はシズと本件建物に移り、昭和三八年四月八日シズと婚姻し、同月一一日本件建物をシズ名義に所有権移転登記を経由している。

5 昭和五四年一〇月二三日輝治が死亡し、昭和五五年二月一八日シズも死亡したが(シズが同日死亡したことについては、当事者間に争いがない。)、シズは死亡する迄本件建物に居住しアパートの収入を取得しており、被告が本件建物にシズと同居をしたことはなかつた。

6 本件建物について、昭和五五年六月三日受付をもつて同年二月一八日の死因贈与を原因として、シズから被告に所有権移転登記を経由している。

(二) 借地権の死因贈与について<中略>

ところで、賃貸人である原告らの承諾がなくても、借地権の譲渡について背信行為と認めるに足りない特段の事情があり、無断譲渡を理由とする契約解除が許されないときは、賃貸人の承諾があつたのと同様に、被告は借地権の譲受をもつて対抗できるものと解されるので(最判昭和三九年六月三〇日民集一八巻五号九九一頁、同昭和四四年四月二四日民集二三巻四号八五五頁参照)、この点について検討をする。

前記認定のとおり、被告はシズの相続人ではなく同人が死亡する迄本件建物に同居したことはなかつたが、シズは被告の実父輝治の後妻であること、本件建物は輝治が資金を出して原告らの先代から購入し増築をしたものであること、原告らの先代はシズと輝治の両名が使用することを承知のうえで本件土地をシズに貸渡していること、本件家屋とその借地権は死因贈与の方法によつてシズから被告に譲渡がされているが、被告は輝治の唯一人の相続人であるので借地権の相続に近い譲渡の形態であること、また本件建物は従来から現在までアパートとして利用されていること、一方被告が借地権を譲受けても本件土地の利用・賃料の支払等について別段変化のないことなどが認められ、これらの諸事情から考えると、本件譲渡は背信行為と認めるに足りない特段の事情のある場合にあたるものというべく、原告らは無断譲渡を理由に契約解除をすることが許されず、賃貸人である原告らの承諾があつたのと同様に、被告は借地権の譲受をもつて原告らに対抗できるものというべきである(昭和四一年の借地法の改正により、譲渡の承諾に代る裁判の制度が創設されたが、右改正後も前記最高裁判決の見解の基調は維持してよいと考える。)。  (山田二郎)

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